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特定技能は「移民政策」?

このページでは「特定技能」資格と「移民政策」の関係性について説明をしています。

「移民政策」ではないと言い切る政府

2018年11月現在、国会で審議中の外国人労働者の受入拡大を主旨とする入管法改正案ですが、その国会答弁においても、資料においても必ず耳にするのがこのキーワードです。

「これは移民政策ではない」

ただし、今回創設される「特定技能」資格の中身を見てみると、その業種は限られるものの、「特定技能2号」資格があれば、滞在期間の上限がなくなる制度設計となっています。これは、永住申請への道が開かれることを意味しており、事実上、日本への「移民」の道が開けるものとなっています。

このように明らかに今後の外国人定住者の増加が見込まれる政策なのにも関わらず、それを政府が「移民政策」ではないと言い切れるのは何故なのでしょうか。

そもそも「移民」とは

実は、今回の制度は2016年より自民党内の「労働力確保に関する特命委員会」にて議論がなされてきたものであり、そのころから「移民制度」との兼ね合いについても検討がなされてきました。自民党としては空前の人手不足に対応するため外国人労働力の活用は産業界からの要請もあり必達事項ではあるものの、支持母体である保守団体や党内の保守派を取り込むためにはどうしてもアレルギー反応を生みやすい「移民」という言葉を避ける他なかったようで、前述の「労働力確保に関する特命委員会」で以下のような「移民」の定義がなされました。

「移民」とは、入国の時点でいわゆる永住権を有する者であり、就労目的の 在留資格による受入れは「移民」には当たらない。

https://www.jimin.jp/news/policy/132325.html

この定義によると、確かに今回の「特定技能」資格は入国時には永住権があるわけではなく、永住権を有するようになるためには試験合格、滞在年数などの条件が整ってからとなりますので、「移民」ではないと胸をはって言えることとなります。

ただ、よく引用される国連統計委員会への国連事務総長報告書(1997年)に記載されている定義「通常の居住地以外の国に移動し、少なくとも12ヶ月間当該国に居住する人のこと(長期の移民)」に従えば、明らかな「移民政策」となります。また広辞苑で「移民」を調べると「他郷に移り住むこと。特に、労働に従事する目的で海外に移住すること。また、その人。」とあります。「特に、労働に従事する目的で海外に移住すること」は肌感覚にもぴったりくる定義ではないでしょうか。この定義には永住権の有無は関係がありません。

また、短期ビザで入国し長期ビザに切り替えるなんていうことはざらにある移民手段です。ヨーロッパ、アメリカのいわゆる「移民」達全てが入国時に「永住権」をもっていたとは到底思えません。やはり自民党の特命委員会では「移民」の意味する範囲を過小に定義しているように思えてなりません。この定義をもって、今回の政策が「移民政策」に当てはまらないと説明したとしても、多くの国民の理解を得るのは困難でしょう。

言葉の定義を超えて

自民党関係者が「移民制度」ではないという根拠を見て来ましたが、「移民」かどうかは実はどうでもよい問題であったりします。大切なのは、日本にやって来る外国人労働者達とどう日本社会を作り上げていくか、その具体案ではないでしょうか。どんな外国人に来てもらい、どんな仕事をしてもらい、どんな管理をするのか。そうすることにより、企業に、外国人労働者に、そして日本社会にどのような「よい影響」をもたらせようとするのか。それが大切なのです。「移民制度」かどうかという言葉の定義よりも中身の議論に注視していければと考えています。

 

 

Author: tokuteiginou

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